「脱属国論」を読んだ。

『p32

伊勢崎　……いわゆる「交戦主体」かつては「国家」でした。戦争するのは国家の軍隊だけだったわけです。

　ところが、その後世界は「内戦」の時代を迎え、国家内の揉め事に、周辺国や大国が介入し、国家間の戦争とおなじ規模の犠牲者を生むようになりました。そのため世界は戦争のルールを、国家より小さい主体にも適用しなければならなくなりました。

田原　どういうことですか？

伊勢崎　つまり、軍隊であろうが、自衛隊であろうが、警察であろうが、広域暴力団であろうが、町内会の自警団だろうが、どんな組織であるか、組織の実力の大小は問わず、国家の命令を受けて、国家の自衛権の行使に使われたら、すべて「交戦主体」とみなされるので、国際人道法で統制されます。違反すれば「戦争犯罪」です。

田原　つまり、ヤクザだって国際法に従って戦争できるわけ？

伊勢崎　できます。交戦をした瞬間、国際法上の扱いは軍と同じになります。

　だから自衛隊は軍隊ではないと言い訳しても､国際法の世界では何の意味もありません。PKO（国連平和維持活動）など自衛隊が海外派遣された現場、あるいは日本近海で不審船が出没し防衛出動することになった場合などに、自衛隊が武力を行使すれば、その瞬間に自衛隊は交戦主体即ち軍とみなされます。当然、自衛隊は国際人道法に則った行動を期待されます。もしも違反行為、即ち「戦争犯罪」を犯した場合、日本は国際社会の中の一国家として、自衛隊を国内法で起訴し、裁判にかけることが求められます。その責任能力を国際社会は「主権」というのです。

　日本では、自衛隊員が命令外に於いて、個人の故意で武器を使用した場合については起訴することができます。唯、国家の命令を受けた軍事行動に於いて発生した「戦争犯罪」を起訴する法体系はありません。国際法に則り、戦争犯罪を裁く法体系を設置しようとする主張を、「軍法会議の復活を目指すもの」だとミスリードし、無視し続けてきたのです。

……

田原　10年くらい前、当時は自衛隊に反対していた共産党の志位和夫さんに、もし日本が攻め込まれたらどうするんだと聞いた。すると、志位さんは国民の皆さんに集まってもらうといったんだ。集まってどうすると聞いたら、家にあるもので戦ってもらうと。戦時中の愛国婦人会よろしく、竹槍で戦えと、共産党の志位さんが言ったんだよ。

伊勢崎　それでも、ご婦人たちが捕虜を素手で絞めて殺すと、ジュネーブ条約違反ですので戦争犯罪になります。ご婦人も国際法では立派な交戦主体ですので。

田原　いや、だから僕が言いたいのは、竹槍なんかじゃなく、近代装備の軍隊は要らないのかっていうこと。

伊勢崎　志位さんは、日本外国特派員協会での会見（2018年4月18日）で、「日本が侵略されたら自衛隊を含むあらゆる手段を使って対処する」とおっしゃっていますよ。

田原　いや、当時の共産党は、自衛隊なんかいらないと考えていたんだからね。

伊勢崎　いえ、この会見はYouTubeに残っていますが、こう続きます。「あらゆる手段を使って対処するが、国際人道法に対応する軍司法制度の法整備は必要ない」と。

　これって、我が国を侵略したらジュネーブ条約も戦争犯罪も無視してボコボコにしてやるぞという、危険な独裁国家でさえいわないような、極右集団さながらの台詞です。

井上　まったく伊勢崎さんのいう通りなんですよ。9条で戦力を放棄したから日本は戦争はできないと護憲派は言いますが、そんなことはまったくありません。事実として戦争ができてしまうにも拘わらず、それを裁く国内法が9条があるために存在できない、というのが実態なんです。』

この人たちはどうも自衛隊をPKOに出したい、ということらしい。

　井上達夫が、湾岸戦争に「人を出さなかった」ことでクウェートが出したお礼の新聞広告には日本の名がなかった、それが外務省のトラウマになった、などと言っているが、原油はロシアにもベネズエラにもある。少しくらい高くなっても、戦争に参加するよりましだ。原油の輸入価格を安上がりにするために自衛隊に戦争をさせるのか。

自衛隊を国外に出さないなら国内法で対処できる。

我が国を侵略したらジュネーブ条約も戦争犯罪も無視してボコボコにしてやるぞ､でよいのでは。

民族と民族の間の戦争になったら実際にそうなっている。

第一次世界大戦の結果、ドイツは民族として衰退しろ、ドイツ国家などなくなってしまえ、といわんばかりの扱いを受けた。そう言われてそのまま衰退していく民族などいない。（いたらそのまま歴史から消えてしまうだけ）ドイツは｢生存空間｣を求めて東に押し出した。例えばそれが一千万人分の土地だとしたら、ロシア人が一千万人餓死することになる。ロシアの側だってそれは受け入れない。どちらにしろ一千万人が死ぬまで終わらない。

民族戦争とはそういうものだ。

そんなことを起こさないためには、最低限国家・民族の生存は世界全体で保証する、という世界安全保障システムがなければならない。

p158

井上　……僕は、アメリカ信仰をとくに「幼児的願望思考」と呼んでいます。

　アメリカを「強くて優しい慈父」のように慕う、

p170

冷戦の遺物・朝鮮国連軍を解体せよ

伊勢崎　対米従属というか、いまの日米安保は他の同盟ではあり得ない異常な体制ですね。

　親米国もしくはアメリカの同盟国は数々あれど、日本のような異常な属性はもう他に存在しないのです。

……

横田空域のようなものはアフガニスタンにもありません。「米軍の自由出撃」も「全土基地方式」だって他国にはないのです。「戦時/準戦時」のアフガニスタンでさえ、アメリカ軍のすべての行動はアフガニスタン政府の「許可制」なのです。

ちなみに、（朝鮮戦争が）1953年に休戦してから…今日まで朝鮮半島に駐留しているのは、アメリカ軍ではなく｢国連軍｣なのです。……

朝鮮戦争は現在も｢休戦状態｣なので、この国連軍は健在です。……

2017年に米朝開戦の危機を連日日本のメディアが煽っていた時に、オーストラリアの軍用機が、｢日本政府の許可なく｣嘉手納基地に飛来しました。国連軍は、同国を含め、アメリカを中心として、イギリス、フランスなどの諸国、そして韓国の12カ国で編成されています。この中に日本は入っていません。

　これがどういうことなのか、おわかりでしょうか。もし休戦が破られた場合、安保理の承認を待たず、というか議論さえされず、アメリカを中心とするこの12カ国の協議で、朝鮮戦争の再開を決定することになります。その決定に日本の存在はありません。しかし開戦すれば｢自動的｣に日本は彼らと同じく｢交戦国｣になるのです。

　何せ、朝鮮国連軍の後方司令部は横田基地にあります。また北朝鮮攻撃には在日米軍基地が間違いなく使用されますし、北朝鮮はそれらの基地を直接攻撃可能な弾道ミサイルを配備しています。｢巻き込まれる｣なんて生やさしいものではありません。お友達である米国の戦争に組み込まれ、米国本土より先に直接被害を受ける構造です。

　ちなみに戦時国際法では｢中立法規｣といって、お友達の戦争から中立であるための条件を定めています。その条件とは、簡単に言えば、｢基地を作らせない｣｢通過させない｣｢お金を出さない｣。日本は、このすべてをしっかりやっていますから、米朝開戦となれば、自衛隊が何もしなくても日本は北朝鮮にとって、国際人道法に則り、合法的に攻撃できるターゲットになるのです。

地球上に、こんなことを放置しているおバカな国はありません。

開戦の決定権もないのに開戦すれば、自動的に交戦国になる。

このように｢自衛の主権｣をまったく持っていない状況で、集団的自衛権がフルスペックかどうかと議論することに、一体何の意味があるのか。これが｢9条の平和｣の正体で、日本には個別的自衛権さえないのです。

p180

田原　僕は、イラク戦争の二ヶ月前に、フセイン大統領にインタビューできるときいて、イラクに行ったことがある。

　イラクに着くと、フセインの側近が、田原の行動は全部CIAにキャッチされているから、会った瞬間、フセインは爆撃される。だから、フセインには会えないと言った。代わりに､副大統領のラマダーンと、副首相のアズィーズの二人とは会わせると。

　で、僕はラマダーンと会った。これは面白かった。ラマダーンが僕に、我々は核兵器、大量破壊兵器は持っていない。アメリカは持っているというが、残念ながら持ってはいないと言ったんだ。

　アメリカはイラクが大量破壊兵器を持っていないことを知っている。だから、きっとアメリカは攻撃を仕掛けるだろう、と。逆に、もしもイラクが核兵器を持っていたら、アメリカは絶対に攻撃しないだろう、と。副大統領のラマダーンがそう言っていたんだ。

　北朝鮮はイラクの例をよく知っているから、核兵器を本当に持たなければ、いつかはやられると思っている。

井上　その通りでしょうね。

田原　あと、中東で殺された、彼も同じ。

伊勢崎　リビアのカダフィーのことですか。

田原　そう。カダフィーもアメリカと交渉して、核兵器の開発を止めたんだ。その結果、彼は殺された。北朝鮮はそれもよく知っている。だから金正恩が核兵器を放棄することはない。

p304

井上　……日本で働いて自分と家族の生活をよくしたいという移民の権利は棚上げして、日本の労働者、日本人生活者の権利と利益は守れというのは問題でしょう。人権とは、国籍を問わず人間として認められるべき権利のはずですから。

（100人分の米を作って100人が生きている村によそ者が10人入ってきたら、村の生活水準は低下する。外国人労働者が入ってきたら、彼らと競合する日本の底辺労働者はその分貧しくなる。そんなことをさせてはいけない。外国人労働者は海にたたき込め、が正しい。

　井上という人は何処かの大学教授らしいが、すべての大学教授と同数の外国人大学教授を導入して、給料は半分こさせる。それなら反対しない。やれるならなってみろ。

　なぜ人口が減少するかといえば、家族が増えると生活水準を下げなければならなくなるからだ。矢島）　

アメリカは日本を守るわけではない。

「日本型経営システム」の究極の原理を言葉にしてしまえば、「会社は会社員・従業員のもの」であり、「会社は株主のもの」という資本主義の原理が否定されているのだ。

それはあの戦争の中で日本国民が獲得した「革命」だ。

吉田茂と昭和天皇は資本主義の側に立ってアメリカと通じた。だから昭和天皇は守られ、吉田は首相に抜擢された。

いま、「革命」はアメリカの手先たちによって鏖殺されようとしている。アメリカが日本の資本主義反動を指嗾しているのだ。

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